装蹄のQ&A
- 蹄は、気候や季節に影響されますか?
影響されます。よく知られているものでは、蹄の固さと生長に対する影響があります。日本のように湿度の高い環境では、蹄の角質が軟らかくなり、時として角質の損傷を引き起こす原因になる場合もあります。また、夏期は蹄の生長が早く、冬期は遅いことも知られています。 - 馬の肢蹄を管理するうえでの注意点や方法は?
何よりも、よく観察し、異常やトラブルを早期に発見することが大切です。 蹄は常に地面と接しているため、汚れがつきやすい環境におかれています。そのため、ぱっと見ただけでは、蹄のトラブルに気付かない事も少なくありません。トラブルの早期発見のためには、手入れの際はもちろんの事ですが、手入れの時以外にも裏ほりをするなど、頻繁にチェックすることが肝心です。またその際に、蹄や下肢部の温度、関節のむくみや腫れなども一緒にチェックすることが、肢蹄トラブルの早期発見のためにはより効果的です。
- 蹄と敷料の関係は?
蹄はタンパク質を主体とするため、アルカリに弱い性質を持っています。敷料が馬の尿を多量に含んでいる場合、尿に含まれるアンモニア(アルカリ性)によって、蹄角質が劣化しやすくなります。また、蹄は水分を多く含むと軟化し、変形を引き起こしやすくなるうえ、細菌や真菌に腐食されやすくなります。健康な蹄を維持するためには、馬が普段生活する馬房内の敷料を清潔かつ、ほどよく乾燥した状態に保つ事が重要です。馬に使用する敷料としては、アンモニアが揮発しやすく、蹄の裏にも詰まりにくい稲ワラや麦ワラが適しているとされています。
- 蹄鉄を打ち変える(改装)期間の目安は?
アルミニウム合金製の蹄鉄は、摩滅しやすいため、2~3週間ごとに改装するのが一般的です。一方、鉄製の蹄鉄を一般的に用いる乗用馬では、1月~1月半ごとの改装が目安になります。
ただし、馬によっては蹄鉄の摩耗が強い場合もあるため、改装期間を短くしなければならない事もあります。また、蹄鉄が摩耗していないからと言って、改装期間を延ばす事は推奨できません。蹄鉄が磨り減らなくても、蹄は日々生長するので、定期的に改装し、伸び過ぎた角質を整形する必要があります。馬の下肢部の構造上、蹄が伸びた状態では、関節や筋肉、腱、靱帯にトラブルを引き起こす可能性が高くなります。- 競走馬と乗用馬では使う蹄鉄が異なるのですか?
競走馬ではアルミニウム合金製の蹄鉄を、乗用馬では鉄製の蹄鉄を使うのが一般的です。アルミニウム合金製の蹄鉄は、摩滅しやすい反面、とても軽いという特徴があります。一方、鉄製の蹄鉄はアルミニウム合金製のものに比べて重くはありますが、対摩耗性に優れています。
- 装蹄の目的とは何ですか?
そもそも装蹄という技術は、輸送手段として長距離を歩く馬の蹄が過剰に摩滅するのを防ぐために、およそ2500~2600年前にヨーロッパで発明されたと言われています。もちろん今でも装蹄は、蹄の保護を目的として行われていますが、現代では、アスリートとして活躍する馬達が圧倒的に多いため、より運動に適した肢蹄の状態を造り出すための技術として注目されています。他にも、肢勢の矯正や、治療の補助を目的として、特殊な装蹄が施されることも少なくありません。