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装蹄のお知らせ
2021.12.24

ホームメイドシューコンテスト2021・Specialの結果発表

 ホームメイドシューコンテストは、本来、全国装蹄競技大会の付帯行事として行ってきましたが、昨年度の全国装蹄競技会が中止となったため、コンテスト内容を再検討し、今回だけの特別企画となる「ホームメイドシューコンテスト2021・Special」として実施しました。また、今回はオープンクラスとインターメディエイトクラスというクラス分けはせず、若手の装蹄師も積極的に参加できることを念頭に、「新標準蹄鉄07タイプ一装(前肢用2個と後肢用2個の合計4個)と前肢用全溝連尾蹄鉄1個」を課題蹄鉄としまた。

北海道日高装蹄師会、山形県装蹄師会、NAR教養センター装蹄師会、クレイン装蹄師会、JRA装蹄師会などの地方会から、総勢20人の参加があり、審査委員の中島装蹄師の審査の結果、以下の方が優勝者となりました。後日、本会会長からの賞状と賞品(今回だけのスペシャル企画です)が優勝者には送られます。

・ホームメイドシューコンテスト2021・Special

 優勝者

 JRA装蹄師会 津田 佳典 装蹄師

今回の造鉄製品についての中島審査委員の講評は以下の通りですので、参加された皆様は今後の参考にしてください。

審査講評

 今回、20人という多数が参加したホームメイドシューコンテストは、全体的に仕上がりの良い蹄鉄が多く見受けられました。使い慣れた工場と制限時間がないという条件の中ではありますが、基礎鍛冶技術の鍛錬の成果を感じました。

特に、全溝付き連尾蹄鉄では、ハンマーフィニッシュとは思えないほど、連尾部分と鍛着の仕上がりの良い作品が多かったと感じました。また、07タイプ蹄鉄では、釘孔の若干のズレは見受けられたものの、多くの作品では前後肢蹄鉄ともに左右ペアの均一性は概ね整えられていました。しかし、溝が均一性を欠いたり、鉄枝の形状と一致していないものも散見されました。溝の位置は、蹄鉄の安全性として最も重要なポイントの一つである釘眼と釘孔の位置にも直結することになるので、正確に作製できるように練習に励んでいただきたいと思います。また、釘眼・釘孔が蹄釘と一致していない蹄鉄も見られ、その殆どが、釘孔が大きすぎるため、釘頭を溝で固定している状態でした。釘頭の形状とサイズに合わせた釘眼を作製できるように道具の調整にも心がけていただきたいと思います。

今回の審査ではこれらの基本的な鍛冶技術は勿論ですが、「内外鉄枝と剰縁剰尾の面取り」、「07タイプ蹄鉄の内鉄枝の下狭処理」、「後肢蹄鉄追突予防」、「接地面の平坦性」など安全性を重視して審査したので、以下にその項目について詳しく解説します。

内外鉄枝の面取りについて

造鉄の工程ごとに鋭利な角を落とす「面取り」処置はされていることは見受けられましたが、折角付設した面が作業工程の中で減じ、完成時には面取りがされていないような状態になっている作品が散見されました。特に、接蹄面の最大横径部から鉄頭部にかけての面取りが不足している作品が多いようでした。作業工程で消えないように十分な面取りをおこなうか、仕上の段階で今一度面取りを行うことで対処できることですので注意してほしいと思います。

剰縁・剰尾の面取りについて

07タイプ、全溝連尾蹄鉄ともに剰縁剰尾の面取りは良好に処理されていたと感じました。しかし、欲を言えば鎚を45度の角度に傾斜させて鎚打できると更に良好な蹄鉄に仕上がるはずです。この傾斜角度が浅いため、鉄枝が潰れて薄くなったような作品もありましたので、日頃行っている銀線掛けのイメージを持ちながら処理をしてください。

内鉄枝の下狭処理について

実際の装蹄では、交突や踏み掛け防止のために重要な処理のはずなのに、付設不足の作品が非常に多かったのは残念に思います。また、この下狭処理が不足していると内外の鉄枝を区別することができないため、採点されないことにもなります。接地面から見てはっきりと内鉄枝だと区別できるくらいに処理を行うよう心がけてください。

追突予防について

後肢蹄鉄の鉄頭部接地面の追突予防は、ほぼ全ての作品に良好に付設されていました。ただ、鎚打の傾斜角度が浅いため、処理部分が浅くなり、仕上げまでの行程でほとんど処置がされていないような作品になっていたものも見られました。鉄枝や鉄尾の面取りと同様に、しっかりと追突予防として残るように意識して付設するように心がけてください。

接蹄面の平坦性について

殆どの製品では良好な仕上がりでしたが、蹄鉄全体が歪んでいるものや、釘孔を修整した後のバリが処理されていない状態で提出されている作品も見られました。特に接蹄面の平坦性は蹄鉄の装着には欠かせない、重要な基礎的技術の一つなので最後には必ず確認することを忘れないよう心がけてください。

以上を今回のホームメイドシューズコンテストに参加した20人の作品の総合的な講評とさせていただきます。

なお、今回は優勝者のみ発表で、参加者一人ひとりの成績をお知らせすることができませんので、それぞれの作品に私から一言ずつコメントを添えて返送します。今後の参考にしていただき技術の錬磨に励んでいただければと思います。

令和3年12月15日

審査委員 中島康貴(JRA装蹄師会)

 

 優勝者の造鉄製品